その冬、僕は眠り続けるのに苦労した。
 部屋の密閉度が低いためにあらゆる場所に隙間が存在し、全ての隙間から寒気が入り込んでくるのだ。その全方向性空冷機構の制御方法は不明。全ての気孔から過去の映像を脳内へ直接的にリフレインする幽霊が入り込んで来てくるかのようで落ち着かない。幽霊はエッシャー蜥蜴のように浮かび上がったり沈み混んだりしながら、僕の睡眠覚醒シーケンスに忍び込んでくるのだ。断続的な眠りの、とあるピークで、結局僕はそのシーケンスを断念する決心をした。

どこからか手に入れた寝台からもそもそと起き上がりながら暗視モードで空間を走査する。見つかった断片、『クローム襲撃』。80年代の古臭い内向的な現代性をパッケージした計算機の思考形態のサンプルだ。

そろそろ文体のトレースを中断しよう。『クローム襲撃』を読み直しながら、過去の僕が何を考えたか、何が好きだったか、どのように考えようと考えたか。全てはその文書を読み直すことで浮かび上がってくる。それは文章の形態を取った過去の自分の雌型である。

結局のところ、それが僕の「ホログラム薔薇のかけら(Flagments of a Hologram Rose)」だったのだ。

ここに来て、僕の80年代はようやく決着したのである。

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ごあいさつ

昨年は、本ページ『デス&ラバーズ』への多数の御来訪ありがとうございました。本年も変わらずの御愛顧っちいただければ、これ以上の喜びもあったりなかったりですが、そこんところ素人名人会で鐘が少ない感じの関西ローカルで対艦ミサイルは飛び出すわ体育館シューズで登場だわで、聖衣っぽく装着した人出てきなさい(腕に)!といった感じの弱々でしわしわの牛若など、老人へのアッピィルが少なかったと反省しております。半生キャンディどこいったの?

20世紀は機械の世紀と言われています。もうすぐ20世紀も終わりなので機械も終わりですね。機械の次は奇っ怪にネジクレ曲がった生物などが遺伝子をまき散らしながら牧伸二のコスプレなど、21世紀はコスプレです。楽しみですね。でも、今年はまだまだ20世紀なので奇っ怪な機械が歯車をきしませながら牧伸二のコスプレなど、コスプレです。楽しみですね。総じて奇っ怪です。

駅の地下などに錦鯉を泳がせるなどの無駄なお金の使い方をしながら、恋に弄ばれるなど、意識の方向性が迷走する中、メゾンとかコーポでメンソールを一式揃えて生活をはじめるなど、新しさや斬新さなどを間違えながら生きていこうと誓ったり誓わなかったりとか、優柔不断で申し訳ないですが、そんな感じで今年もやっていきたいのでヨロシクお願いです。メカ犬。