(2000/8/30)

帰宅してみると、上等の神戸牛肉が届いていた。
 こりゃ今晩はスキヤキしかないな、と思ったのだが、一人で食べきれるものでもない。電話で近くに住んでいる友人にスキヤキを食べに来ないかと尋ねると喜んで行くとの返事。とりあえず、牛肉を冷蔵庫に仕舞い込むと、友人の座るスペースを確保するために部屋の片付けを始めた。

かなりの量のゴミが出たので、透明ポリ袋に詰めて屋外のゴミ捨て場に捨て、ついでにコンビニまで足をのばす。『週刊少年ジャンプ』から今日発売の『週刊少年サンデー』まで、月曜から水曜までの漫画週刊誌をあらかた読み尽くしてから、ペットボトルで茶を買ってぶらぶらと部屋まで戻った。

目が点になった。
 両親とそれになんと伯母までが部屋に勝手に上がり込んで団欒としているではないか。何事かと尋ねようとしても声がすぐには出てこず、口をぽかんと開けた僕に向かって父親が、神戸牛が届いているだろう、と問う。冷蔵庫に閉まったと言うと、今晩はみんなでスキヤキを食べるから準備を手伝え、と張り切った様子で返す。
 ああ、そのために牛肉を送り付けてきたのかとぼんやり考えながら、スキヤキの準備を始める。

困ったことに長ネギがない。昨日、薬味として味噌汁に入れたので最後だったのだ。長ネギがないとスキヤキが始められない、と父親は言う。幸いまだ夕刻だったので、僕が自転車で買い出しに出かけることになった。

自転車にまたがって駅前のスーパーに向かっていると、茜色に染まった川沿いで農家の人が野菜を直売している様子が目に入った。オレンジの照り返しと長く濃い影で陰影のくっきりした陳列台に、確かに長ネギの姿も見える。
 こっちの方が近いから、という消極的な理由で自転車を止め、農家の親父に声を掛ける。1本150円。 少々高いが、しかし物は確かだろうと思い、それを下さいと答えた。

御座に木箱を置いただけの陳列台の向こうで、農家の親父が突然、長ネギを刻み始めた。驚いている僕の目の前で、牛肉と糸こんにゃくの煮物と刻んだ長ネギを混ぜ、パックに詰めて新聞紙で包装して渡してくれた。なんだ僕はスキヤキを買ってしまったのか、と釈然としない思いで150円を支払った。

すぐに違うと言って返品し、長ネギだけをくれと言えばいいのだろうが、元来気が弱い僕は一旦自転車のところまで引き返し、そうそうと思い出したように戻って普通の長ネギも下さいというのがやっとだった。

かくして、なんとか長ネギを手に入れた僕は、なんだか落胆した気持ちでだらだらとペダルを漕いでもと来た道を引き返していた。ここに来て、ようやく僕は、友人とスキヤキを一緒に食べようと約束してしまったことを思い出した。謝りの電話を入れようとポケットを探るが、どうやら携帯電話は部屋に置いて来てしまったようだ。この150円のスキヤキで許してもらえるだろうか、家に帰って電話で断るか、それとも寄り道をして直接断りに行こうか、

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 といろいろ考えていると目が覚めたよ。そんなにスキヤキが食べたかったのですか?無意識的に。
 というかむしろ、目が覚めたらフレックスコアタイム開始20分前!ってことの方が衝撃はデカいのですが。
 大急ぎで着替えて岩槻たくなる号(自転車)を飛ばします。急げ!長ネギ!

なんとか間に合ったので、席のPCを立ち上げてから、生協でパンと飲み物を買って戻ると、僕とほぼ同時に 出社した隣の席の人が「いきなりパンかい!」とツッコミを入れてきます。
 「寝坊して朝ご飯が…」と適当に相づちを売ってパンを食いつつメールをチェックしていると、隣の人が いきなり電気カミソリで髭を剃り始めました。それはいいんですか!
 髭剃りが終わると今度は、CD-ROMの裏を鏡に使いながら鼻毛を抜き始めました。
 絶対パンより上行ってるって!

ジョリジョリジョリ

そんな毎日、生きてます。

お詫び:
 催促をくれた方には申し訳ないのですが、もともと7月後半から8月末までは更新するつもりはありませんでした。だったらそういう断り書きをしておけばよかったのですが、それは全く僕の手落ちです。ごめんなさい。百苦タイマーの値が常に3(by 新屋敷泰史)の僕ですから現実で満足ということであるはずもなく、むしろ百苦タイマーの値で示されるような茫洋とした"何か"があったのだろうと想像していただくしかありません。
 多分、その"何か"は現在も進行中ですが、そろそろページを再開してもいいだろうという精神状態に落ち着いて来ました。自分勝手ですが、そういうものだと思っています。
 8月に起こった、外に出せそうな話題については特別編として公開準備中ですのでそちらをお待ち下さい。とりあえず、これからもよろしくお願いします。というお願い。

含みを持たせて言い訳しようとする、あさましい心。